今年も正月に八甲田に行って1/5夕に帰ってきたのですが, 10年来の大雪で, 昨 日1/4には酸ヶ湯の裏の湯坂の30度ぐらいある斜面も雪が深過ぎて直滑降でも滑 れないほど(スキー履いて腰まで潜ってしまって板が全然浮いてくれない。滑っ たと思うと周りの雪も一緒にずり落ちている!) この大雪と山中で風邪ひいてし まったこともあって, 仙人岱ヒュッテ(12/31〜1/3)でも酸ヶ湯(1/3〜4)でもほと んど寝正月でした(;_;) --------------- 【日 程】1998/12/31〜1999/1/3 【山 名】八甲田山 (仙人岱周辺) 【メンバ】雪兎+カミさん,吉崎さん,村林さん,小島さん,一戸さん,石塚さん 他 【天 候】雪 ときどき 吹雪 一時 小雪 ■アプローチ(12/30〜31) 去年まではミニ周遊券と夜行急行八甲田が(臨時だが)あって, (青森〜酸ヶ湯間 もJRバスなので)東京から\20,000かからないで八甲田まで行ってこれたのだが, 今年からは両方とも廃止されてしまって, しかし車で行くのも今年は雪で大変そ うなので, 夜行高速バスと新幹線という組み合わせにしてみた。12/30 21:30東 京駅発青森行ラフォーレ号は大増発で15台ぐらい出た。夜行バスは高速道路がい ちばん空いてる時間に走るようで, 途中トイレ休憩で何度も止まる増発便でも快 調に走って定刻より早い朝6:20頃に青森に着いてしまった。 青森市場で酒とツマミとリンゴを買って豪華な\1300市場定食食べてから, 青森 の吉崎さんの車で酸ヶ湯に向かう。去年も一昨年も仙人岱ヒュッテで一緒になった 青森の田代さんから1週間前に電話あって, 同じ日に入る吉崎さんが駅まで迎えに来 て一緒に乗せてってくれるというのでご好意に甘えた。小屋の暖房用の灯油も上 げるつもりでいたら, もう(僕の分も)上げてあるから, その分人間の燃料もって きてくれということで, 去年の石油1リットルより重い日本酒1升を上げることに なった(^^;) 酸ヶ湯には, 前日に仙人岱に入った本庄の小島さんも迎えに来てく れて, 吉崎さんが車でもってきた缶ビール18本を一緒に担ぎ上げてくれた。 ■12/31 酸ヶ湯→仙人岱ヒュッテ と 昼寝 と 宴会 酸ヶ湯で登山届出すとともに1/3,4の宿泊予約してカミさんの運動靴を預かって もらい, 10:30に出発。小雪舞う快適な樹林帯から強風の地獄谷を抜けてゆっく り2:30かけて仙人岱ヒュッテに入る。調子のヨシさんこと吉崎さんは1週間前の荷 揚げのときにナイロンシールの滑りが悪くて難儀したそうで, 今回は滑りがいい と大自慢のアザラシシール, 途中でトップに立ってからはダントツぶっちぎりの トップで地獄沢を登り切った。 仙人岱ヒュッテには13時ちょうどに着き, 天候も(地獄沢の風以外は)たいした吹 雪でもないが, 風邪気味で喉が痛いのと夜行の疲れとで小屋で寝て過ごし, 夕方 早々と常連10人ほどで宴会に突入する(今年は天候が厳しいせいか地元の常連以 外はほとんど来てなかった)。飯も食わずにマグロの刺身やナマコ, まつぶ貝な どを堪能し酒もビール, 日本酒, ワイン, バーボンとつい飲み過ぎてしまい, 風 邪のせいか気持ち悪くなってしまって早々に横になった。気づいたらシュラフに も入らないまま1999年になっていて, 風邪をこじらせてしまったようだ(;_;) 一昨年も小屋で一緒になったAbさん, 僕に,「大門さん, 岳人見て自分が出てたので びっくりしたで。」「いやー, 後ろ姿ぐらいなので特に問題ないかと思いまし て,,,」「いや, 正面から出てたのもあったよ」 おかしいなあ, ほとんど後ろ姿 のはずなのだが,,,と思いながらも「え, そうでしたっけ, それはどうもすみま せん」と一応あやまったのだが, 帰って確認したらやはりAbさんは小さく後ろ姿 と横姿が出てるぐらい。横顔ちょっとぐらいでも本人にはけっこう気になるもの のようで, こういうのは要注意なようだ。 ■1/1 硫黄岳往復 と 昼寝 と 宴会 吹雪だがちょっとは視界あってホワイトアウトというほどでもないので, 仕事の 都合で今日降りなければならないという小島さんと午前中に硫黄岳を往復してき た。硫黄の鞍部までの下りはシール付けたまま行ったがこれで正解だった。腿ま でもぐる深雪で下りでもラッセルになった。視界悪いが風の強い鞍部らしいとこ ろからそのまま南に進んでいくと広い尾根状の登りになって雪も締まって楽に登 れるようになった。最後, 山頂直下で間違えてほんのちょっと尾根の左(東)に 寄って吹き溜まりに入ってしまったらそこだけは腿までのラッセルでえらく消耗 した。尾根上のちょっとの風の当たり具合の違いで雪質が非常に不均一だという ことで, 安心して滑れる状態ではない。シール外して滑降に移るが恐る恐るでも 滑降は3分で終わって鞍部らしい地形になり, 登りのラッセル跡ももう見失って しまっているがとりあえずシール付けてチョコレートなど食べて気を落ち着け る。来るとき滑ってきたコースより右(谷側)にずれると小屋に帰り着けなくなる 可能性があるので, 意識的に左(尾根)寄りに登っていくと10分ほどで右から, 往 きの下りのラッセル跡が合流したと思ったら, すぐに小屋に着いた。 11時半頃戻ってきたが, 1日吹雪で, 風邪気味でもあり, その後は風邪薬飲んで 寝ていた。夕方ちょっと回復してまた宴会。午後に登ってきたKuさんから鮭のい い寿司(飯寿司?)などごちそうになる。午後には, 去年小島さんとカミさんと一緒 に硫黄林間コースを滑ったテレマークの中渡さん, その連れのTyさん, 僕と同じ 板・靴・bindingの石塚さんなど登ってきて昨晩と同じぐらいの人数になってい た。正月の仙人岱に初めて来たTy氏は革靴に白いオーバーシューズにフィット フェルトbinding, 商標ひとつない真っ白い板の裏には幅5mmの細く深い溝と1000 円玉ぐらいの大きな鱗, つまり自衛隊スキーだ。このうろこもやはり新雪ではあ まり利かないようで, 一緒にきた中渡氏が新品の貼り付けシールを貸したが全然登 れない, 30分たっても来ないのでおかしいと思って戻った石塚さんが見ると, シー ルの裏のビニールを外さないまま付けていた。中渡さん自身は取り付けシール使っ ていて貼り付けシールの使い方は知らなかったそうで, 登っては滑り落ちてと30 分ぐらいもやってたらしい。体力あるなあ, しかしそんなことでは国が滅びる よ, ズルードテンとやってるあいだにズドンとやられてイチコロでねーか, と大 爆笑。 石塚さんは僕と同じスキーに同じbindingにほとんど同じ靴(TourLite3と2の違いだ け)だが, 装備を消化するようにしっかり使いこなしているのに感心する。 TourLiteのインナーブーツの紐は長い紐1本で上から下まで締めるようになって いるが,これを2本に分けて, 上は上, 下は下で締めるようにしているとのこと。 下半分を締めないと上の穴を通せないが, 上の穴を通していると下半分が緩んで しまう。分けて結べばそういうことはないわけだ。小屋の中にある腰掛けや小屋 入口の扉の動く幅5cmほどの溝の雪をかき出すのにぴったりの変形シャベルなど, すべて器用な石塚さんの作だったと初めて知った。そういう労作シャベルを春に持ち 帰る不届き物もいるらしい。高山植物の盗掘にでも使うらしい(;_;) ■1/2 仙人岱周辺の散策と涸沢滑降 と 昼寝 と 宴会 朝, 熱っぽいので風邪薬飲んでしばらく寝ていたが, 吹雪とはいえ前日よりは穏 やかな天候でときたま雪雲が薄くなって明るくなったりもするので, 大岳を目指 すと威勢よく1人で小屋を後にする。仙人岱まで5分ほど歩いてみるが, どうも風 邪薬のせいか自分の体が自分でないようで調子出ない。結局仙人岱の池のところ で大岳見上げてガスが一向に晴れないのを眺めて小屋に引き返してまた寝る。 昼ごろ, 毎朝香り高い挽き立てのコーヒーを入れてくれる小屋主の村林さんと 12/27から入っていた田代さんとあざらしシールの吉崎さんが下山するので地獄沢源 頭まで見送る。スキーは抜群にうまい(らしい)田代氏も含めてシール付けたまま慎 重に地獄沢を下っていったのが意外だった。戻ってまた寝てるとテレマークの若 者が酸ヶ湯から登ってきて, 30分ほど昼食とるとすぐ空身でスキー持って出て いった。裏の涸沢で深雪滑降を堪能してるのに違いない。釣られて僕も1本滑る が, 板が深く潜り過ぎてしまい, 快適というより雪崩が怖くて(巻き込んだり巻 き込まれたりしないかと)気を使う。雪深くて登りも大変なので1回でやめた。後 で聞いたら5本もやったとのこと。去年1年間酸ヶ湯でガイドやってた成田さん(27) だった。去年だかの岳人に, 正月に南八甲田から北八甲田まで3日間でスキー縦 走した記録が出ていたがその3人の1人でもあった。偶然にも前の晩から泊まって るKu氏のすぐ近所で, Ku氏の娘さんとも同級生だとかで携帯電話で話させられて いた。東京で勤めたが, 八甲田の自然が忘れられず戻ってきたそうで, 去年1年 雪少なくて本当に心配した, 今年雪降ってくれてほっとしたとのこと。 夜, 寝る前にふと小屋の戸を開けて外を見ると, ほとんど雪も風もやんで, 極低 温ながらときどきそよ風のように弱い風に雪がわずかに舞う。仙人岱方向の林 が, 薄い雪雲をとおした月の光に淡く浮かんで, この写真には写らない静かな美 しさに息をのんだ。引き込まれそうな景色で, 風邪を押してスキーはいて行って みようか迷ったがカミさんに引き止められた。しばらくしてまた見ると, 吹雪に 戻っていたので, 行ったら春に凍死体で発見されることになってたのかも,,, ■1/3 酸ヶ湯へ下山 温泉と昼寝 8:30頃, ラッセルマン成田さんを先頭にKuさんと中村さんが吹雪の中を下山。1時間 ほど遅れて僕とカミさんと一戸さんと石塚さんも小屋を出る。僕とカミさんだけシー ルなしで行ったが地元の人はみんな地獄沢を抜けるぐらいまでは慎重にシール付 けていくようだ。地獄沢源頭部の強風と吹雪の中, ちょっとした登りをジタバタ と抜けて下りにかかるが後ろのカミさんと一戸さんが来ないので戻ると, カミさん が強風の中でシール付けていた。ここだけ登ればもう下りになるのに, こんなこ となら最初からシール付けてくるべきだった。一戸さんにまで寒い強風の中足止め 食らわせてしまって申し訳ないことしてしまった。地獄沢の強風帯を抜け, 深雪 の中のシュプールを快適に滑って地獄沢から樹林帯の台地に登ると3人パーティ が休んでいた。こんにちはと言って初めて, それが1時間前に出て行った3人だっ たことに気づいた。全く滑れなかった彼らのラッセルのおかげで快適に滑ってこ れたわけだった。そこから下もシールつけてラッセルで行くのかと思ったら, 3 人はシール外して滑っていった。前日のシュプールなど全く埋もれてしまって影 も形もないかなりもぐる雪の中, ほとんど登り返しのない正確なルートどりで 酸ヶ湯まで先行してくれた。さすが元ガイドだ。 ここ数日の積雪はすごいようで, 雪慣れしてない東京の庭木に大雪が降ったみた いにまわりの木々が50cmもの雪の帽子をこんもりかぶって枝をたわませている。 八甲田でこんな光景見たのは初めてだ。今年は春スキーが楽しみだなあ, これな ら6月頃まで滑れそうだ, と石塚さん。 10:30に酸ヶ湯に降りるが, 青森の面々はいつでも入れるからか誰もこんな時間 から温泉になど寄らずに車で帰宅していった。酸ヶ湯の玄関で, 酸ヶ湯のガイド ツアー常連の世田谷の仲よし夫妻に2年ぶりで再会する。去年は雪不足で僕と入 れ違いに大晦日に帰ってしまったらしく, 今年は悪天候で1回しか滑ってないと か。早々と温泉に入り, お昼を食べに食堂に行くと, 去年も一昨年も仙人岱 ヒュッテで会った埼玉の白石さんに似た人がいる。声かけるとやはりそうで, 一昨 日来たものの大雪で1人では難しそうなので酸ヶ湯に2泊してこれから帰るという ところだった。今年は来ないのかなあ, まあしかしキックターンも覚束ない彼に は今年は来たら危険だ, と小屋で村林さんなど話していたのだが, 妥当な行動を選 択したようだ。うまい天ぷら蕎麦食べて昼過ぎに湯治部屋に入り, また昼寝。と きたま太陽もさして天候はまあまあなのだが, 風邪が悪化しているし明日もある ので, 湯坂はボーダー軍団に任せてまた寝正月(^^;) ■1/4 昼寝 + 湯坂にみみずシュプールをつける 天候は吹雪, 雪の降り方も激しいので昼すぎまで温泉浸かったり寝たりとぐーた らしていたが, 午後から湯坂の上に登ってみることにした。半分はボーダーのス ノーシュー?の跡を使ったので楽だったが, 後半, そこから外れて湯坂の裏の山 毛欅(ぶな)林の方に向かうととたんに腿までのラッセルになってまいった。林の 中は風もゆるく雪も落ち着いて膝ぐらいのラッセルになり心も落ち着く。湯坂の 上の平坦な裸地に出ると滑り出しまでのわずか30mばかりがまた腿までのラッセ ルで苦労する。シール外していざ滑り出してみると, これが全く滑らない。直滑 降でも滑らない(;_;) 油断してるとスキーのトップが下に潜っていってしま う。やっと滑り出したと思うと板だけでなく身の周り1mぐらいの雪も一緒にずる ずると滑り落ちている。滑ってるのではなくて局所的な雪崩になって雪と一所に ずり落ちているわけだ(*_*) 斜面の真ん中でなく樹林帯のわきなら少しはマシ かともう1本やってみたが同じで, シュプールもミミズみたいで美しくない(^^;) 2回で湯坂を切り上げて, シール外したまま踵を開放して雪の車道を饅頭ふかし の方に行ってみる。が, 大雪で道路から饅頭ふかしまでは猛烈なラッセルしない と行けない。諦めて道路の脇の地獄沼だけ眺めて戻ってきた。道路の脇の雪の壁 は1mから高いところでは4mぐらいもあって, 30cmしかなかった去年の正月とは大 違いだ。帰りのちょっとした下り凍結道路でテレマーク姿勢で回ってみる。爪先 を支点に直線的に靴の踵が上がるだけの山スキー道具(TourLite3+フリッチ DIAMIR)なんかでも案外それらしく回って楽しめた。そうだ, 今度カミさんのXC 板と靴も買って5月には南八甲田を回ろう。 酸ヶ湯のスキー靴の乾燥室は関係者以外立入禁止のボイラー室なのだが, 昔はス キー客が自分で出し入れしていたし, 忙しい宿の人に頼むのも悪いので常連は自 分で出し入れしてしまう。夕方, スキーしまって靴を置きに乾燥室に行くと, 昼 に出かけるときにはなかった変なシートが置いてあった。ちょうど人間が包まれ ていたかのような形にへこんで凍った地味な色の大きなシートだ。遭難の話も聞 かないし, ちょっと気味悪かったぐらいなのだが,,, 1/3午後に八甲田スキー場 で行方不明になって4日午前に下半身沢に浸かった状態で凍死して発見された東 京の老人が(恐らくそのシートにくるまれて)スノーボートに乗せられてロープ ウェーの下に降りてきた写真を見たのは翌日, 青森駅で何気なく買った東奥日報 でだった。恐らくその写真も1/3まで仙人岱に一緒にいた一戸さんが撮ったものだ ろう。八甲田でのその前の死亡事故は7〜8年前に高校教師が大岳山頂で凍死した ものだそうで, そのときにも仙人岱ヒュッテ付近で遺体がヘリにつり上げられて ゆくのに出くわした。亡くなった方のご冥福をお祈りします。